連日のウクライナ、ガザの痛ましいニュースに日々心を引き裂かれる思いです。80数年前、日本人にも、国策の下に他国の領土を侵略し開拓して戦争に巻き込まれ、多くの人命を亡くした歴史があります。幾度となく繰り返されてしまう、この戦争というものが、いかに恐ろしく、そして愚かなことであるかを見つめ直すと共に、その渦に翻弄されながらも強く生きた満州引揚者の母親の苦悩に、少しでも希望のカケラを見出したい。そして今一度、平和の尊さを思い返したい。そんな思いからこの企画が始まりました。
いつもどこか他人事で、戦争をリアルに感じる事も少なく、社会との繋がりも希薄になりつつある現代日本人に戦争や平和について考えるきっかけを作りたいと同時に、我が子を思う不器用な母親の気持ち溢れるこの戯曲を通して「あなたの事を思っている人が必ずいる」ということ、「生きるということは、誰かの願いであり、祈りであること」を伝えられたらと思っています。
今作の演出は、登場人物の心情に寄り添うことで温もりのある作品作りに定評のある藤井ごう氏にお願いしています。つらい史実に基づく物語ですが、母親の我が子を想う気持ちが未来の希望になる作品にすべく準備を進めています。
 
当時の満州ではどんなことが起き、そこに暮らす人々は何を感じ、生きていたのか。全てを語り尽くすことはできませんが、少しでも知ってもらうことで平和の尊さ、そして家族の想いの大きさを伝える作品にしたいと思っています。